フロントエンドのWebアプリケーションやWebサイトでは、便利な機能を備えたフレームワークやライブラリを用いることが当たり前となっています。
ビルドツールを使用すると、これらの依存関係の管理やブラウザ向けへの変換などの煩わしい処理を自動化することができます。
このようなソフトウェアは、年々変化するトレンドに影響され、新しいツールが次々と登場しています。
この記事では、最新ビルドツールの特徴や、どのようなプロダクトに適しているかをまとめてご紹介します。
ビルドツールは、フロントエンド開発において欠かせないツールの一つであり、開発効率や品質の向上に大きく貢献しています。
ビルドツールの役割は多岐にわたりますが、以下に主な役割を紹介します。
Javasvcriptでは、より効率的に開発ができるようにES6やTypeScriptなど新しい規格が日進月歩で考案されています。
しかし、古いブラウザではこうした新しい規格に対応していないケースがあり、対応ブラウザが限られてしまうことになります。
そこでトランスパイルをおこなうことで、古いブラウザがサポートする規格に変換することができます。
また、SCSSなどのCSSプリプロセッサのファイルを、ブラウザが解釈できるCSSに変換する機能も提供されています。
本番環境向けのビルドでは、Web表示速度向上のために複数のJavaScriptファイルやCSSファイルを1つのファイルにまとめることが一般的です。
ビルドツールは、これらのファイルを自動的に結合することによって、ブラウザが効率的に読み込めるようにします。
一部のバンドルツールでは、画像、フォントなどのアセットまで含めたバンドルが可能です。
開発段階では、モジュールシステムを使ってコードを分割することが一般的です。
ビルドツールでは、これらのモジュールを管理し、必要に応じて必要なモジュールだけを読み込むことができます。
コード内で使用されていない関数や変数の削除、画像の圧縮、SVGの最適化、ファイル名の変更、ファイルの結合などを行い、ファイルサイズを小さくすることでパフォーマンス改善を図ります。
ライブリロード:ファイルの変更を自動的に検知し、ブラウザをリロードして変更を反映します。
ビルドツールは、開発中のコードの変更を自動的に検出して、必要なビルドを自動的に実行することができます。
また、ビルドが完了したら、ブラウザをリロードして変更を反映することもできます。
フロントエンド開発においてビルドツールが誕生した経緯には、JavaScriptのモジュールシステムの標準化の遅れが関係しています。
当初JavaScriptはモジュールシステムを持っておらず、スクリプトを別々に読み込む場合には、グローバルスコープに変数を定義する方法が採られていました。
しかし、グローバルスコープでの変数の使用は、予期しない名前の競合や、コードの重複などの問題を引き起こすことがあります。
この問題を解決するために、CommonJSとECMAScriptの2つのモジュールシステムが提案されました。
CommonJSは、Node.jsなどのサーバーサイドJavaScriptで利用され、requireとmodule.exportsという形式でモジュールを定義します。
ECMAScriptは、ブラウザ上でのJavaScriptの利用に焦点を当て、ES6(ECMAScript2015)からはimportとexportという形式でモジュールを定義することができます。
(このようなモジュール管理の機能をNative ESMと呼びます。)
しかし、ブラウザ上でのJavaScriptの実行環境が標準化されるよりも前に、CommonJSとECMAScriptのモジュールシステムは広く使用されるようになりました。
そのため、ビルドツールは、CommonJS形式やECMAScript形式のモジュールをブラウザで実行できる形式に変換する必要がありました。
最初期のビルドツールとしては、BrowserifyやRequireJSなどがあります。
Browserifyは、CommonJS形式のモジュールをブラウザ上で利用可能な形式に変換するために開発されました
RequireJSは、ECMAScript形式のモジュールをブラウザ上で利用可能な形式に変換するために開発されました。
このようなビルドツールによって、ブラウザ上でのJavaScriptの開発がより効率的になり、モジュール化によるコードの保守性や再利用性が向上しました。
現在では、webpackやesbuild、Rollupなどのビルドツールが広く利用されています。
前章のビルドツールの役割で紹介したように、ビルドツールはモジュールの変換だけでなく、さまざまな最適化機能や、複数の言語やフレームワークを組み合わせて開発する際のインターフェース標準化などの機能を提供しています。
近年のビルドツールのトレンドとしては、以下のようなものが挙げられます。
ビルドツールの起動時間やビルド時間を短縮することが求められています。
多くのビルドツールは、キャッシュ、並列処理、インクリメンタルビルドなどの機能を提供して、ビルド速度を向上させています。
JavaScriptのモジュールシステムには、CommonJS形式、AMD形式、ES Modules形式などのさまざまな形式があります。
ビルドツールは、これらのモジュール形式を相互に変換することができますが、ES ModulesがWebの標準的なモジュールシステムとして位置づけられているため、ES Modulesに特化した機能を提供するビルドツールが増えています。
(IEのサポートが終了した現在、全てのモダンブラウザがES Modulesに対応済みとなっています。)
TypeScriptは、JavaScriptに静的型付けを追加することで、言語仕様の問題点の1つである型の曖昧さを解決し、より品質の高いコードを記述することができます。
最近のビルドツールは、TypeScriptをサポートすることが一般的になっており、TypeScriptのトランスパイルや型チェックなどを自動化することができます。
より高度な機能や複雑なUIを実現するためReact、Vue.js、Next.jsといったフレームワークが広く普及しました。
こうした背景から、最近のビルドツールは、これらのフレームワークとの統合を容易にするためのプラグインや設定を提供しています。
今回は、npmで公開中されているパッケージのダウンロード数の比較データをもとに、各バンドルツールの特徴をご紹介します。
[引用元] https://npmtrends.com/
webpackは最も利用されているビルドツールであり、2023年現在もトップの地位を維持しています。
webpackは高い柔軟性と拡張性を有しており、大規模で複雑なアプリケーションでも保守性の高いコードを担保することができます。
幅広い開発で取り入れることが可能ですが、特に柔軟なカスタマイズが必要なケースや、大規模なWebアプリケーションの開発に適しています。
https://esbuild.github.io/api/
esbuildは、Go言語で実装されたJavaScriptおよびTypeScriptのビルドツールであり、非常に高速でありながら、堅牢なビルドプロセスを提供します。
開発ビルドではノーバンドル(HTTP/2 などの高速なネットワーク環境では、多重ストリームを利用してES Modules を直接ロードすることでバンドルを省略する手法) に最適化されており、開発者体験の向上を実現します。
高速でシンプルなビルドプロセスを必要とするケースや、高度な最適化を必要とするケース、小〜中規模のWebアプリケーションに適していると考えられます。
https://rollupjs.org/introduction/
RollupはJavaScriptライブラリの開発者向けに設計されており、モジュールの最適化に特化した特徴があります。
ライブラリのビルドや小規模なアプリケーションのビルドに適していると考えられます。
Viteは当初Vue.jsのための開発サーバーとして公開されました。
その後、ESモジュールに対応した静的サイトジェネレーターとして機能を拡張し、Vue.jsだけでなく、ReactやSvelteなどのフレームワークにも対応するようになりました。
開発サーバーとしてesbuildを使用し、本番環境向けにはRollupを使用することができます。
これにより、開発者体験の向上と、本番での動作安定性を実現しています。
Vue.js、React、Preact、LitElementなどのフレームワークやライブラリを使用したWebアプリケーションの開発、また開発効率を重視するケースや、小規模なプロジェクトなどに適しています。
いかがでしたでしょうか。
ビルドツールは、フロントエンド開発において品質や開発効率を左右する重要な要素になります。
最新のトレンドを把握し、適切なビルドツールを選択することで、より高品質なWebアプリケーションの開発に繋げましょう。
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